RECRUIT

CAPITALIST INTERVIEW
パートナー
湯浅 エムレ 秀和
2014年 参画
起業家を信じ、
最後まで共に戦う。
次の産業を作るために。
Emre Hidekazu Yuasa
あなたにとって、VCの仕事とはどういう仕事ですか?

この仕事には、大きく3つの役割があります。ひとつ目は、スタートアップ起業家の伴走者という役割。ふたつ目は、機関投資家からお金を預かり、そのお金を増やすファンドマネージャーとしての役割。そしてみっつ目は、スタートアップエコシステムの仲介者というか、エコシステム自体を育てるという役割です。

 

スタートアップ起業家の伴走者というのは、文字通り経営者と一緒に走っていくということです。私たちはいわゆるハンズオン型のVCなので、投資するだけでなく、経営に深く入り込んで成長を支援していきます。ほぼすべてのケースで社外取締役として経営に参画し、人材の採用や組織の設計、事業提携先の検討、海外展開に向けた事業戦略の立案などに取り組みます。個人が保有するネットワークやこれまでのビジネス経験をすべて活用して、その会社の様々な経営課題の解決に一緒に取り組んでいくわけです。

ファンドマネージャーとしての役割は非常にシンプルです。私たちは、保険会社や年金基金などみんなの大切なお金を運用している機関投資家と呼ばれる方々から、お金を預かり、投資しています。そのお金をベンチャー投資を通じて、増やして、投資家の方々にお返しする。これがファンドマネージャーとしての役割です。お預かりしたお金を2倍にしてお返しするのが及第ラインで、できれば3倍、4倍にしてお返しするというのがファンドマネージャーに期待されるパフォーマンスとなります。

 

最後のスタートアップエコシステムの仲介者についてですが、私たちはスタートアップを今以上にもっと盛り上げていこうという活動を、かなり精力的に行なっています。たとえば私の場合は、グロービス経営大学院のベンチャー系科目の講師を担当してします。直接的に自分の投資にはつながらないのですが、たとえば授業を受けた生徒が、ゆくゆく起業することがあるかもしれません。もしくは大企業の中でオープンイノベーション担当になるかもしれません。そういうかたちで、将来的にスタートアップの業界を盛り上げる側になってくれたらうれしいな、という想いを持ってやっています。ほかにも、セミナーを開催したり、アクセラレータープログラムにメンターとして参加したり、大企業の社内ビジネスコンテストに協力したり。これからも魅力的なスタートアップが生まれるように、いろいろな取り組みをしています。

その中でGCPは何が他社と違うのだと思いますか?

一番大きな違いは、伴走者としてハンズオンで経営に入っていくということだと考えています。これができるVCは非常に少ないのが現状です。投資するときはほぼすべてのケースでリード投資家となり、他の投資家とも交渉しながら、そのラウンドを取りまとめて投資を行ないます。その後、担当キャピタリストが社外取締役として投資先の会社に入り、株主の立場で経営をモニタリングすると同時に、もっともっと成長するようにハンズオンで支援していきます。

 

ハンズオンは、人材採用とか資金調達、事業提携、海外進出など、いろんな局面において支援をするのですが、最も特徴的なのが起業家と非常に近しい関係性になるということです。投資のタイミングがアーリーのケースが多いので、本当に山あり谷ありで一筋縄ではいきません。それでも、どんなときもその会社に付き添い、起業家と一緒に最後まで走り続けます。調子が良いときだけ応援しているのではなく、覚悟を決めて、本当につらいときも連れ添うわけです。

 

夜中の2時に悩みが綴られた長文のメールが届く。土日に電話がかかってきて悩みを聞く。そういうやり取りを積み重ねていき、どんどん深い関係になっていきます。仕事上の付き合いではあるものの、「この仕事が終わったとしても、この人とは戦友としてずっと付き合っていきたいな」という感覚があります。投資先の起業家とそういう関係になるというのは、私たちの大きな特徴だと思います。

スタートアップエコシステムの仲介役という観点では、私たちはスタートアップのことが大好きであるということがあります。仕事としてではなく、個人的な志向性としてスタートアップに関わったり、応援したりすることが好きなわけです。土日でも休日でも、投資先の経営合宿やイベントがあれば参加していますし、「スタートアップに興味がある」という人がいれば気軽にお会いしてお話します。起業家と家族ぐるみでお付き合いしているケースもあります。個人的には、仕事と思って日々活動している感覚はあまり無いです。

仕事のやり甲斐や厳しさについて教えてください。

社会的な意義を常に感じられるというのが、この仕事の一番のやり甲斐です。
例えば、僕が担当しているGMSという会社は、主に東南アジアでオートファイナンス向けのIoTソリューションを展開しています。東南アジアには、タクシーのドライバーとして働いている人がたくさんいるのですが、自動車ローンを借りられない、場合によっては銀行口座すら持っていないという人が相当数います。自分で車を買えないから誰かに借りて仕事をする。結果、売上の多くがレンタル料の支払いに消えていき、生活はなかなか豊かにならない。そんな状況がずっと続いていたところ、GMSがこの課題をテクノロジーで解決しているんです。

 

GMSのハードウェアを車に取り付けると、インターネットにつながって遠隔で制御をかけられるようになります。たとえば、月々のローン支払いが滞ったドライバーがいたら、ネットを通じてその人の車にロックをかけることができるのです。商売道具が使えなくなると困りますから、ドライバーは延滞が起きないようにローンを支払うようになります。すると、お金を貸す側である金融機関のリスクが下がるので、ローンの金利を下げられる。そうすることで、より多くの人がローンを利用できる。さらに、自動車メーカーやディーラーにとっては販売先が増える。結果的に、Win-Win-Winになるわけです。

 

投資を検討しているときに、フィリピンの現地に視察に行きましたが、GMSのステッカーをつけたバイク型のタクシーが町中をたくさん走っていました。ドライバーにヒアリングしてみると「GMSのおかげでこの車を買えた。稼ぎも増えた」と。GMSがあることで、レンタル代がローンの支払いに変わり、手元に残るお金が増え、子供を学校に行かせることができるようになったと喜んでいました。そういう話をヒアリングできたときに、「こんな素晴らしいことをやっている日本のベンチャーがあるんだ。ここは絶対に応援したい」という気持ちになって投資を決めました。GMSはとても分かりやすい例ですが、他の投資先スタートアップも社会的に意義のある事業を展開しており、そのような企業の成長を支援できることは、非常に大きなやり甲斐です。

 

仕事の厳しさは、大部分が「人」に関わることですね。出資先の企業において共同創業者やキーパーソンが辞めるとか。言葉にすると「一緒にいた仲間が辞める」ということなのですが、そこに至るまでにいろんなプロセスを経ているんですね。感情やそれぞれの思惑が入り混じって、ロジックだけでは解決できない状況になっているわけです。社外取締役として、仲介役・調整役として状況を整理しようとするのですが、ケースによってはお互いが「もう話したくない」みたいなこともあるんですよ。そういう場合でも、根気強くやり取りを重ねて、話し合いのテーブルについてもらえるよう努力します。解決するまでに一年半かかったケースもありましたね。こういった人と人との問題に対しても、当事者として正面から向き合っていく。諦めることなく解決に向けて最善を尽くす。これがこの仕事の厳しい部分の1つだと思います。

今後ご自身としてどのようなバリューを発揮していきたいですか?

テクノロジーの領域で、日本発のグローバル企業をつくっていきたい。そのために影響力を発揮していきたいという想いがあります。

 

個人的な話になりますが、僕は海外での生活が長かったですが、小さい頃は、「お前は日本人か?日本には良い会社がたくさんあるな」みたいなことを言われて育ってきました。しかし、大学や大学院に通っていた頃には、話題になるのはアメリカや中国のテクノロジー系の会社のことばかり。日本の企業の話は聞かなくなりました。

情熱を持ち、能力がある優秀な人は日本にもたくさんいます。しかし、テクノロジーの領域においては、世の中を革新するグローバルで勝てる企業が出てきていません。そこに個人的な課題感を持っています。

 

アーリーステージから支援しているスタートアップが成長し、日本はもちろん海外にも事業展開していく。会社の名前を聞いたら、世界中の人が知っている。テクノロジーの領域で、日本のベンチャー企業をそういう立ち位置まで持っていきたい。このプロセスに、当事者として関わっていきたいと思っています。

VCを組織でやる意味はどこにあるでしょうか?

そもそも、VCは個人事業主のような動き方をすることがほとんどです。私たちも、みんなが集まるのは月曜と火曜の朝だけで、それ以外はそもそも会社にほとんどいません。投資候補先に会いに行ったり、投資先の会議に参加したり、イベントに出席したり、バラバラに動いています。

それでもあえて組織でやる意味としては、いくつかあると考えています。

まずは組織で動くことによって分散投資が可能になり、事業上のリスクを軽減できるというメリットがあります。たとえば、僕がIoT領域に強いとして、その領域の会社にばかり投資をしていたとします。すると、仮にIoT業界が沈んだら、ファンド全体が沈んでしまいます。一方で、組織のなかにブロックチェーンに強い人やヘルスケアに強い人がいれば、投資先を分散できるし、リスクを軽減できるわけです。

 

また、規模の経済が働くというメリットもあります。たとえば人の採用をするとき。投資先がCOOを探しているとして、サーチをする場合、僕個人のネットワークには限界があるわけです。しかし、組織のほかのメンバーに「こういう人を探しているのだけど、心当たりない?」と持ちかけることができれば、求めている人材にリーチできる可能性は高まります。私たちがやっているハンズオンの支援を、より効果的に進めるにはどうあるべきか。これを考えたときに、組織でやることがプラスに働くケースが多いわけです。

 

加えて、組織であるからこそ、お互いに支え合えるといった精神的なメリットもあります。普段やり取りをするスタートアップの起業家はもちろん大変なのですが、彼らを支援している私たちもいろいろと大変なこともあるわけです。そのため、同志として相談できる相手がいるという環境には本当に助けられています。

 

会社としては、ナレッジやネットワークの共有を非常に大切にする風土があります。月曜と火曜の朝に行なうミーティングでは、それぞれが今どのような案件を担当しているのか、マーケットをどう分析しているのかというのを頻繁にディスカッションしています。加えて、半年に一度の合宿も行なっています。ここでは、中長期的な戦略についてお互いの考えを出し合います。たとえば「3年後・5年後に僕らはどういう姿であるべきなのだろうか」「環境が変わっていく中で勝ち続けるためには、どういうケイパビリティを持っておく必要があると思うか」といった議論をしています。

 

普段はひとりのプロフェッショナルとして個別に動いていますが、「組織としてみんなで進んでいる」という感覚は各自がしっかり持っていると思います。

どんな人にJoinしてもらいたいですか?

ひとことで言うと、総合力を持っている人、でしょうか。いろいろな分野において、高い値を持っている方というか。

 

たとえば、人間関係をつくる能力。僕らは常に新しい人たちとお会いしていて、その人たちと会話を通じてゼロから人間関係を構築していきます。起業家からも「この人に投資してもらいたい」と魅力を感じてもらわなければいけませんし、投資家からは「この人にお金を預けても大丈夫だ」と信頼してもらわなければいけません。いろんな立場の人と良質な人間関係をつくっていく上で、純粋に「人間が好きである」という素地を持っていることはマストだと考えています。

 

加えて、アナリティカルなスキルも欠かせません。僕たちは、将来が不明確なもの、まだ完全にわかりきっていないものに対して投資を行なっていきます。根拠なく、闇雲に投資を行なうということはもちろんなく、ある程度の仮説を立てて投資の検討を進めていきます。「この業界は5年後にはこう変わっているだろう」「そんな中でこういうアセットを持っている人たちが一番強くなるのではないか」「だから5年後を見越して、今こういう企業に投資するべきではないか」。このような議論を重ねていきます。抽象的な部分もありながら、できるだけ精度の高い仮説を立て、それをつなぎ合わせて判断の根拠を組み立てて行く。こういう能力も欠かせない部分です。

 

求めるマインドとしては、待ちではなく自らガンガン行けるということ。私たちは待っていても誰も何も指示を出しません。自分で必要なことを見つけて、自分で行動が起こせるというのは非常に大切になります。状況が変化し続けるなかで、自分でいろいろと行動しながら、いまこの時代に自分の強みが活きるやり方で、どうやって実績を出していくのか。これを常に考えながら仕事をするという楽しさがあります。さまざまなことを試しながら、良いと思えたことを残していき、次につなげる。このプロセスを自発的にやり続けられる人というのが、この業界では生き残っていくと思います。

 

加えてメンタルタフネス。スタートアップは本当にいろいろと大変なことがあります。私たちは伴走者として、距離が近づけば近づくほどスタートアップの大変な局面を一緒に体験していきます。人が辞める、競合が入ってくる、売上が全然つくれない、もうすぐキャッシュが尽きるとか、これらを当事者として体験するわけです。それでも諦めず、起業家と一緒になんとか活路を見出す。最後までやり切る。そういう精神的な強さが求められます。

 

仕事のフィードバックループがとても長いということも、メンタルタフネスが必要な理由です。たとえば僕が4年前に投資した会社が最終的にリターンを生むかは、まだわかりません。事業成長はしていますが、この先何があるかわからないからです。自分がやっていることは正しいのだろうか、自分の判断は間違っていなかったのだろうか。こういう不安を抱えたまま、数年の月日が流れていきます。自分の選んだ道を信じる芯の強さや、たとえ途中で転んでしまったとしてもすぐに起き上がって再び全速力で走り出すという強さが必要です。

 

最後に、スタートアップが好きであること。しかも、自ら起業するのではなく、VCという立場でスタートアップを応援することが好きであること。これはすべてのベースになる素養だと思っています。世の中には自分でやりたいという人がたくさんいます。VCは「自分でやりたい」という人たちを応援する立場です。あくまで黒子役であり、あくまで支援をする立場です。その代わりにスタートアップ市場を俯瞰し、多くの投資先と同時に切磋琢磨し、常に新たなフロンティアを開拓する起業家に出会い続けます。この立場で仕事をすることに、やり甲斐やよろこびを感じられるかどうかが非常に重要になってきます。

 

大きなビジョンに向けて挑戦している起業家を応援したり、次世代の産業作りに本気で取り組んでくれる人と一緒に仕事がしたいと思っています。

CAPITALIST INTERVIEW