2.5次元IPプロデュース/ウタイテの魅力 ~ウタイテ倉田氏、GCP野本・阿部~
本記事は、2024年4月に収録されたGCP Houseを書き起こし・一部編集した記事となります。
ウタイテ代表 倉田将志氏が語る創業経緯
GCP阿部)今回は、先日資金調達のリリースを発表したばかりの、ウタイテ代表の倉田さんにお越しいただきました。改めてウタイテの事業やプロダクトの魅力についてお話を伺います。また、今回担当キャピタリストの野本も登場し、投資の背景やその他の魅力的な点についてもコメントをもらいたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
倉田氏)よろしくお願いします。倉田将志と申します。神戸大学を卒業後、就職を考えていた時期がありました。元々伊藤忠商事に入社予定でしたが、卒論提出が5分ほど遅れたことをきっかけに、大学に6年通うことになりました。卒業時に大学の先輩である佐上さんと一緒にウェブメディアの会社を創業し、1年後にPR会社の株式会社ベクトルさんにM&Aしていただきました。
その後2年ほど、グループの子会社役員を務めさせていただきました。次に、様々な会社を買収してグロースさせる業務に携わり、サロンやジム、クリニックなどをM&Aし、成長させることに3年間取り組みました。
M&Aした後、自分より若い会社が急速に成長している時期でした。3度目の起業では、自分の生涯をかけてやっていける領域として、自分の興味のある音楽やライブなどの分野でチャレンジできないかと考えていました。ちょうどその頃、関連するスタートアップの大型IPOがあり、そのマーケットに強い興味を持ちました。
調査を進める中で、2.5次元IPの分野にはまだまだチャンスがあるのではないかと感じました。これをきっかけに、今回はIPOを目指して創業に至った次第です。
GCP阿部)ありがとうございます。野本さんと倉田さんの接点は、最初はいつ頃だったのでしょうか?
GCP野本)私から連絡したというか、既存株主のZVCさん経由で「ぜひ会わせてほしい」と申し込みました。10月頃だったと思います。倉田さんたちがシードラウンドのリリースを出された直後にご連絡させていただきました。
GCP阿部)野本さん、当時の最初の印象はいかがでしたか?
GCP野本)阿部さんも今感じているかもしれませんが、倉田さんには迫力がありますよね。リリースを見て、元々私が非常に興味を持っていたテーマのど真ん中だったので、経営者の顔は見えなくても、とにかく連絡しなければと思いました。お会いして直観的に「只者ではなさそうだ」と感じ、よくよく話を聞いてみると3回目の起業だと知って納得しました。
GCP阿部)倉田さんは、最初に野本さんとお会いしたときの印象はいかがでしたか?
倉田氏)以前グロービスの別の方とイベントでお会いしたことがあり、グロービス全体として人柄の良い方が多いという印象を持っていました。野本さんも以前お会いした方によく似ているなと感じました。
GCP野本)まずいですね。多様性が足りていないということですね(笑)
ウタイテが切り拓く2.5次元IPの新時代
GCP阿部)さて、自己紹介と創業経緯もお話しいただきましたので、ここからは改めてウタイテの事業と特徴について倉田さんからお話しいただけますか?
倉田氏)はい、ありがとうございます。我々の会社は2.5次元のIPを通してその周辺領域のクリエイターなどをサポートする会社となっております。この2.5次元IPというのは弊社の定義でいうと、基本的にはインターネット上でアニメ調のイラストで活動するタレントが、リアルではしっかりとイベントだったり、ライブだったりを行っていくというようなところを2.5次元IPと呼ばせていただいています。そこの周辺に携わるイラストレーターさんだったり、ボカロPさんだったり動画編集クリエイターさんだったりみたいなところも含めたところで、我々は2.5次元IPをいろいろと作っていってサポートさせていただくという会社になってます。
GCP阿部)野本さん、この2.5次元IPというカテゴリーというかこの業界の魅力について、実際リアルなものとは違って2.5次元であることの濃さとか、特徴というのはどのように見られてますか。
GCP野本)元々、コンテンツIPや知財というアングルに注目していました。VCはソフトウェアやアプリケーションに投資するのが本流であるというような雰囲気が今もまだありますが、インテルの創業期とかまで遡れば、もともとは知財・IPとそれを生み出すチームに投資していたわけです。IPを持てば無限に複製できて、その結果として、限界利益率も高いわけです。ソフトウェアも著作物というIPではありますが、SaaSで求められる営業コストすらかからない拡張性っていうのが強いコンテンツIPにはあるので、そのコンテンツIPを自社で持てるスタートアップってのがないのかなってのをずっと模索していました。まさに2.5次元の「2」の部分がそこにあたりますよね。イラストとかキャラを持ってることでコンテンツやグッズに展開できますし、漫画でもアニメでも、いろんな方向に展開できるっていうこの拡張性がこの2.5の「2」の部分の魅力なのかなってふうに思っています。
GCP阿部)2.5次元IPという言葉になじみがない方も多いと思うので改めて素朴な疑問でお伺いしたいのですが、ファンの方とのコミュニティとか熱量みたいなのって、正直どういうふうに醸成していくのかなっていうのがまだイメージがついていないんですけれども、倉田さんから見てどうですか。
倉田氏)そうですね。まずは「歌い手」と言われるマーケットが実際にVTuber同様に現在あるので、まずそこに歌い手ファンのコミュニティみたいなものは既に存在してまして、熱量は他の他の業界と比べて非常に高いと思ってます。いわゆる元来のエンタメ業界で言うといわゆるビジュアルバンドみたいな、何かファンの濃さを感じる業界でありまして。なおかつやっぱりオンラインではイラストで活動していても、ライブでは実際にタレントに会えるっていうところが非常に多くのファンをさらに熱量高いものにしているのかなと思ってます。
GCP阿部)オンライン上でいつも応援してるキャラクターの方の顔がリアルだと見えるのですか。
倉田氏)はい。見える方もいますし、Adoさんのように姿だけ見えるかと思います。イベントなどに行ってもVTuberのように基本的には3Dだったりする方もいれば、生身で出演する方もいらっしゃるというのが、マーケットとしては現状です。
GCP阿部)そういう意味では、ライブに行くのとオンラインで見ることに二重の楽しみがあるというか、また違う見え方もあると思います。そこのわくわく感というのは確かにあるかもしれないですね。それで言うと野本さんはまさにこのマーケットにかなり興味を持っていたというところだったと思うのですが、その限界利益率が高いという点もあったと思います。改めてこの具体的な魅力というのは、野本さんから見てどの辺りを特に魅力的だと思われていますか。
GCP野本)まず取り組んでいる事業領域という意味では、先ほど言ったコンテンツIPという文脈が一つあって、もう1つたまたま別ラインで考えていたアイデアも重なっています。生成AIの活用が今後進むと、世の中に大量のコンテンツが生まれてくるし、またバーチャルヒューマンを含めて、人間らしく振る舞う”存在”が大量に生まれると思うんです。これが一周回ると、その反動で、本当の人間がやっているのかどうかという点が問われ、人間そのものが作ったものに希少性と価値が非常に出てくると思っています。私は勝手に「オリンピック性」と呼んだりしているんですけど、100mを最速で走るのであれば車に乗ればよくて、それでもそれを人間が頑張って走って記録更新に挑戦するからこそファンは熱狂するわけです。人間そのものが背負っている物語とか、ライブ性というものも非常に大事だと考えています。IPの話と、人間としての希少性の話と、それぞれ別々に考えていたアングルが両方一緒になっている事業だというところが、非常に面白いと感じています。これは事業領域の話で、会社の魅力としてはチームの話もあります。倉田さんは画面越しにも迫力が伝わってくるというところや、巻き込み力も素晴らしいですね。お話させていただいている間も、どんどん業界のキーマンのような方が参画決定といった話が出てきて、本当に磁石のように人を惹きつけていくのが素晴らしいと感じています。先々週に出会った素晴らしい方も、もう口説き終わりましたね。
倉田氏)はい。昨日オフィスにも来られていました。
GCP野本)起業していた方ですね。オファーを出して、もうクロージングですね。
GCP阿部)非常に早いのですね。私も投資先の採用支援などをしていますが、人を採用するのは非常に難しい部分もたくさんあると思います。倉田さんの巻き込み力が強いというところもありますし、おそらく相手の魅力をきちんと伝えているところもあると思うのですが、そのエネルギーはどこから来ていると思いますか?
倉田氏)これが元々1社目、2社目のときからスタンダードになっているというところが、やはり大きいのかなと思っています。1社目のときも、1年で約10億円以上の規模でしたが、そのときも恐らく1年という単位で見ると、おそらく最速クラスの2桁M&Aだったのではないかと思います。やはりそこを元々創業のときに1年で10億円以上のM&Aをするという目標で1社目を起業していて、そこをしっかりとタイムラインを厳しく引いて、実際に達成できたというところが、自分の仕事のスタンダードになっているかなと思います。
GCP阿部)3度目の起業経験を活かし、過去からの学びが大きく反映されているのでしょうね。特に組織づくりの面では、その経験が活きているように感じます。先ほどはプロジェクトの概要についてお話しいただきましたが、現在の状況と将来の計画についてもう少し詳しくお聞かせいただけますか。
2.5次元IPの未来を描く
倉田氏)はい。まずは才能のある若い方々が多く存在する業界なので、そういった方々の夢や目標を実現させるサポートを我々がしっかりと行っていきます。我々にできることは、強力な制作チームとサポートスタッフ体制を整えていくことだと考えています。私はチーム作りに今後注力していく予定です。
GCP阿部)ありがとうございます。これまで事業の魅力についてもお話を伺ってきましたが、最近のマーケットの盛り上がりについても倉田さんは強く感じられているとのことです。そのあたりについてもお聞かせいただけますか?
倉田氏)はい。2024年4月末頃にいくつかの大きなイベントがありました。例えばAdoさんの国立競技場でのイベントは、チケットが非常に取りづらいほどの人気でした。これはウタイテの盛り上がりを象徴する出来事だと思います。また、さいたまスーパーアリーナで開催されたCR FESは、eスポーツの2.5次元IPのようなイベントでした。リアルイベントで3Dキャラクターの出演があったり、実際に生で見られる出演者もいるような形式でした。さらに、近い日程では、ぶいすぽっ!さんのイベントがぴあアリーナで行われました。これらの例からも、歌い手、ストリーマー、eスポーツと呼ばれる周辺領域が非常に盛り上がっていることがわかります。まさに2.5次元的で、主にインターネット上で活動しながら、リアルイベントでは大規模な催しを行うという、この業界の特徴が顕著に表れています。
GCP阿部)この領域では本当に大規模なイベントも多く、かなり盛り上がっているようですね。改めて、倉田さんにとっての今後の事業展望や将来ビジョンについてもお聞かせいただけますか?
倉田氏)はい。まずは2.5次元IPを多数ヒットさせていくことが重要です。それらをアニメ化やゲーム化して、グローバルにも展開していきたいと考えています。長期的な展望としては、現在20歳前後の若い世代と接する機会が多いのですが、彼らとの対話を通じて感じるのは、5年後、10年後、あるいはもっと近い将来に、メタバースが大規模なゲーミングプラットフォームにて確立されるのではないかということです。そうなると、若い人々は一般企業で働くか、ゲーム内で仕事をするかという選択肢を持つ世界観が訪れるかもしれません。ゲーム内での仕事や生活がより中心になってくれば、我々の2.5次元IP領域はさらに盛り上がると予想しています。そのときに大きな基盤となれるよう、今から準備を進めていきたいと考えています。
GCP阿部)ありがとうございます。野本さんからも、この2.5次元IPやウタイテに対する期待についてお話しいただけますでしょうか。
GCP野本)現状、このマーケットは盛り上がっており、今後のテクノロジーの進化を踏まえると、オンラインとオフラインの融合がさらに加速していくでしょう。ウタイテはその中心にいます。今回、まだファーストユニットのデビュー前の段階で出資させていただきましたが、ここからの急成長を期待しています。先ほどのAdoさんの話で思い出して少し話が逸れるのですが、音楽の変化の歴史的変遷を見ると、音楽のKSFはメロディ、サウンド、そして世界観へと重点が移ってきています。2.5次元IPはまさにこの世界観を提供するものです。Adoさんのミュージックビデオもその一例ですね。これは時代に適合しており、音楽そのものの発展の流れにも完全にフィットしています。大きな波が来ているので、あとはそれをうまく乗りこなし、やり切ることが重要だと思います。非常に期待しています。
GCP阿部)今のコメントを聞いて、倉田さんはいかがですか?
倉田氏)まさにやり切るのみだと思っています。頑張ります。
GCP阿部)ありがとうございます。私も今日のお話を聞いて、2.5次元という世界観やIPの価値、可能性を強く感じました。これから先、この波に乗り切っていく過程はとても興味深いものになりそうです。我々も一緒に関わらせていただけることを非常に嬉しく思います。これからも様々な形でご支援させていただければと思っております。
では、本日はウタイテの倉田さんと投資担当の野本さんにご登場いただき、ウタイテの事業の魅力についてお話を伺いました。ありがとうございました。
GCP野本、倉田氏)ありがとうございました。
以上