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2025.5.16

教育DXユニコーンを目指すManabieの挑戦—ゼロからの創業、PMF達成、そして東南アジア展開へ

EdtechスタートアップのManabieがシリーズBで33億円の調達を発表。CEOの本間拓也氏とCCOの三澤公希氏が語る成長戦略と将来ビジョンに注目が集まる。

本間氏はQuipperを手がけたシリアルアントレプレナーで、教育ワークフローの90%を変革すべく2019年にManabieを創業。教育特化型バーティカルSaaSで、学習管理から基幹システムまでの一気通貫ソリューションを展開している。

ChatGPTなどの台頭に対しては、教育機関の業務フローに深く統合されたAIソリューションで差別化を図る。多国籍なチームが、フラットな組織文化と権限委譲で急成長を支えている。

こちらは、2025年5月16日にGCP House内で配信したPodcastの書き起こし・一部編集した記事となります。

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アジア教育DXの最前線:Manabie本間CEOと三澤CCOが描く教育DXの道筋

GCP深川)今回は新たな資金調達を発表したManabie(マナビー)から、CEO(最高経営責任者)の本間拓也さんと、CCO(チーフコマーシャルオフィサー)の三澤公希さんをお迎えしています。Globis Capital PartnersでManabieのシリーズA投資を投資担当としてリードし、社外取締役も務める深川康介がお話をうかがっていきます。まずは簡単にお二人の自己紹介からお願いできますか?

本間氏)CEOの本間拓也です。私は山形県の田舎出身で、高校までを山形で過ごしました。その後、東京大学に2年間通いましたが、海外に憧れを持っていたため大学を中退し、3年生から英国ロンドンのUCL(ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン)に留学しました。そこでDeNAの創業者で、メルカリやタイミーの社外取締役も務めた渡辺さんと出会いました。私はずっと『教育×テクノロジー』の分野に興味を持っていたのですが、ロンドンのパブで渡辺さんと話した際、彼も全く同じビジョンを持っていることがわかり、意気投合しました。そこで2010年頃、まだ私が大学3年生だった時に、一緒にQuipperという会社を創業しました。これは教育テクノロジーの会社で、2015年にリクルートグループにジョインしました。その後、私は東南アジア展開を担当し、インドネシアやフィリピンに長く滞在してプロダクト開発と展開を行いました。2019年には、シンガポール在住で金融経験が豊富な香港出身のクリスティと共に、Manabieを創業し、現在に至っています。

三澤氏)三澤公希と申します。Manabieでは日本事業を統括し、CCO(チーフコマーシャルオフィサー)として働いています。私のキャリアについてですが、高校生の時からずっと海外で起業したいという思いを持っていました。この夢は、ホームステイ先のホームファザーの影響が大きいです。彼はアメリカ・カリフォルニアの日系人で、カリフォルニア一、二を争うほどの日本食チェーンを経営していました。彼から大きな影響を受け、自分も海外で起業したいという憧れを抱くようになりました。その後、大学院進学で北京の清華大学に留学した際に起業のチャンスを掴みました。当時の中国は起業に非常に積極的な時代で、大学がインキュベーターとして機能し、多くの起業家と投資家を結びつける環境が整っていました。この波に乗って起業し、中国で5〜6年ほど活動しました。その過程で本間さんと出会い、彼がManabieを創業するタイミングで、約3ヶ月遅れで参画することになりました。

GCP深川)ありがとうございます。本間さんはQuipper、三澤さんは中国で起業されていて、ManabieはChief Corporate Officerのクリスティさんも含め、シリアルアントレプレナーが集まったEdTech企業ですね。しかも二週目、つまり教育テクノロジー分野で再挑戦している方が多い印象です。同じ領域で複数回起業する方はあまり多くないと思いますが、過去の経験を踏まえ、Manabieで改めてEdTechに挑戦した理由や、どのような課題設定・ミッションで取り組もうと考えたのでしょうか?

本間氏)Quipperは、おそらく200万人ほどの有料ユーザーを抱えるまでに成長し、認知度も90%を超えるサービスになりました。しかし、教育の一部分しか触れられていないという課題を感じていました。動画学習というのは、教育全体のワークフローから見るとおそらく10%程度に過ぎません。Quipperでは対応できていなかった領域、例えば教師側の業務効率化や生徒の学習体験の向上、さらに教員の事務作業などがあります。現在、教員は非常に多忙で、教えること以外にも様々な管理業務を抱えています。これらの問題を根本的に解決しなければ、教員志望者は減少し、なった人もハードワークで実際の教育に充てる時間が確保できません。残りの90%の領域もテクノロジーの力で解決したいと考え、2019年にManabieを創業しました。

現在、二つの方向性で事業展開しています。一つは、ワークフロー自体を劇的に改善した教育機関の創設です。ベトナムでは30教室、13,000人規模の学習塾を運営し、実際の教室運営をしながら、学習体験や業務をできる限りデジタル化し、効率的かつ個別最適化された教育を提供しています。日本では、自社での教室運営経験をもとに、深いレベルまでワークフローを把握し、その知見を活かして教育機関、特に大手向けにプロダクトを開発しています。これまでのプロダクトでは解決できなかった課題にも対応し、教育機関の全ワークフローをテクノロジー化することを目指しています。このようなビジョンを実現するためにManabieを創業しました。

個人の起業から共同の挑戦へ:アジア教育変革を目指すManabieの創業決断

GCP深川)ありがとうございます。二つお聞きしたいと思います。一つは、EdTech企業は数多く存在し、Quipperのようにリクルートに買収された例もある中で、なぜ新しい会社を立ち上げる選択をされたのか。もう一つは、三澤さんに、EdTech起業家として本間さんのどのビジョンに共感してジョインされたのかをぜひ伺いたいです。

本間氏)自分でしっかり作り込んでいきたいという思いが強かったのが大きな理由です。プロダクトによって、求められる組織やチーム、カルチャー、人材要件も異なってきます。特に今取り組んでいるように、教育ワークフローの深いところまで入り込むためには、細部まで地道に積み上げていく姿勢が必要です。

そのためには、これまでQuipperでやってきたチームとはまた異なるカルチャーや人材が求められると考えました。ゼロベースで新たに始めたいと思い、新会社を立ち上げました。

GCP深川)教育領域に浸かりきった人材を集め、専門性の高い会社を作るには、新しく立ち上げた方が良いと判断されたということですね。三澤さんは元々EdTech起業家でしたが、別の方が創業した会社に参画するという、かなり思い切った決断をされたと思います。まだ20代だったそうですね。

三澤氏)それまで約6年間起業していて、Manabieに参画したのは27歳くらいでした。このような選択をする人はまだ少ないかもしれませんが、20代前半から一人で会社を立ち上げた経験を通じて、個人の力だけでやることの限界も感じていました。

最初はアパートの一室から始めて、最終的には30拠点まで拡大しましたが、中国の教育規制により営利法人が禁止されるという事態になり、継続することができなくなりました。しかし、教育に対する課題意識は常に持ち続けていました。

アジアの教育にインフラを届けるためには、ユニコーン企業レベルの規模感が必要だと考えています。私は中国の中小都市向けにオンラインとデジタル技術を活用して教育を届けようとしていましたが、本間さんが言うように、デジタルと対面の融合によって教育の本質を保ちながら効率化することが重要です。

自分一人の力では、アジアの教育を変えるレベルまで持っていくのは難しいと実感してました。自分よりも先輩で多くの経験を持つ本間さんと一緒なら、もっと大きなことができると考えました。アジアの教育にプラットフォームを届けるという視点で見たとき、本間さんのチームと共に働くことで、より大きな貢献ができると思ったのが、参画を決めた最大の理由です。

GCP深川)Manabieには、三澤さん以外にも元々自分で事業を経営したり起業していた方が何人かいるので、起業家の方々にもぜひ仲間になってほしいという考えなのですね。

本間氏)それは非常に重要なポイントです。起業すると全ての領域を見ることになります。プロダクト開発はもちろん、営業、カスタマーサクセス、さらには資金調達まで、幅広い業務を担当します。特にスタートアップの初期段階では、オールラウンダーでジェネラリストな人材、そして非常に高い労働意欲を持った人材が求められます。

そういった方々に参画していただくことは大きな価値があります。起業家的な人材が一人加わるだけでも、会社全体のパワーや推進力が変わります。そのような人材を意識的に採用してきた側面もあります

「バーティカルSaaSから海外塾展開まで」:Manabieの教育DX戦略と日本式教育のアジア輸出

GCP深川)事業の話に戻りますと、ベトナムでの学習塾と、日本国内でのソフトウェア事業という二つがあると思いますが、事業の全体像や具体的な取り組みについてもう少し詳しく教えていただけますか。

三澤氏)日本では『バーティカルSaaS』という形でサービスを展開しています。学習面から事務業務まで、入学手続きや請求管理、成績管理などの裏側のオペレーションを支える部分と、生徒さんが学習する表側の学習管理まで一気通貫で提供しています。対象としては、学習塾や専門学校、通信制高校、英会話スクールなど、教育市場向けのSaaSを展開しています。

具体的なサービス内容ですが、先ほど垂直統合と説明しましたが、例えばAIを活用したチュータリング機能があります。生徒さんが分からない時にAIが質疑応答してくれるようなプロダクトです。また、LMS(Learning Management System)と呼んでいる学習管理システムでは、生徒さんがプラットフォームを使って勉強したり、先生がフォローアップしたり、テストを受けたりすることができます。

さらに、基幹システム(ERP:Enterprise Resource Planning)では、生徒募集から入学手続き、請求業務まで含めて一気通貫で管理できるようになっています。

これらのシステムは上から下まで一気通貫で利用することも、部分的にパズルのように必要な機能だけを使うことも可能です。例えば学習塾であれば、個別にコンサルティングをしながら、最適なDXの方法を考え、適用していくようなアプローチを取っています。

GCP深川)教育機関のニーズに沿ったソフトウェアをすべて提供しており、一度に導入することももちろん可能ですが、パズルのような形で必要な部分から段階的に導入していくこともできる。必要なピースは全て揃っているということですね。

三澤氏)最も課題感が強い領域から確実に解決していき、最終的にはデータを一本化した方が効率的なので、全体的な導入を目指すという形で事業を展開しています。

本間氏)ベトナムは基本的に日本の教育市場、特に民間教育(プライベートエデュケーション)に関してかなり似ています。学習塾は受験制度があり、そこで選抜が行われ、その選抜を乗り越えれば良い未来が待っているという前提で、投資という形で教育を受けるという点が特徴です。これは日本とほぼ同じで、高校受験や大学受験があり、競争が厳しいため、みんなが費用をかけてでも準備するというカルチャーが根付いています。

現在のベトナムと日本の違いとしては、おそらく日本の30〜40年前に近い状況があります。学校の教師が自宅で寺子屋のような形で塾を開いて教えるというのが一般的で、日本も昔はそうだったようですが、組織化されスケールする学習塾がまだ少ない状況です。

そこで私たちは、組織としてしっかりとスケールし、共通化できる部分—特に教材やプロダクト、オペレーションなど—を標準化することで、効率の良い運営を実現し、複数の拠点を一気に展開することができています。市場としては非常に日本に近いですね。

もう一つの特徴として、ベトナムの教育全体が日本の教育をベンチマークしているという点があります。科学技術教育において、基礎的な知識の習得は重要です。試験で暗記力を確認したり、基礎学力を重視したりする日本のアプローチは、PISAなど国際的なテストでも上位にランクされているため、ベトナムでは高く評価されています。そのため、日本式の教育はベトナムの人々に非常にポジティブに受け入れられています。

現在、私はホーチミンにいますが、休日にユニクロやニトリ、一風堂などに行くと、日系のサービス業や小売業がかなり展開していることがわかります。これらのお店は品質が高く、かつ手頃な価格であるため、週末になるとベトナムの顧客が大勢訪れ、非常に繁盛しています。

私は教育でも同じことができると確信しています。日本の競争の激しい学習塾や学校市場で磨き上げたオペレーションやプロダクト、教材をベトナムに持っていくと、私たちが当然と思っていることでも感動されるレベルです。日本だけに限定せず、日本の良さを活かしたものをベトナムだけでなく、他の東南アジア、将来的にはインドなどにも展開していきたいと考えています。

GCP深川)自動車やロボット、食品、製造業など、日本は世界で強いイメージがあり、それらをグローバルに輸出するという文脈は理解しやすいと思います。実は教育も、特にアジアでは同様の認識があるんですね。Manabieがやっていることは、日本では各教育機関にソフトウェア層でインフラを提供しつつ、そのノウハウや日本モデルをアジアに展開し、ベトナムでも急速に広げているという、かなり大きな構想があるということですね。

本間氏)日本の塾関係者に私たちのベトナムの教室を見学していただくことがありますが、興味深いのは、私たちとしては相当気を配ってオペレーションをしているつもりでも、来訪者はバラバラに訪れるにもかかわらず、みんな似たようなコメントをしてくれることです。

日本では当たり前の基準が、ベトナムでは—私たちが頑張っていても—まだ達成できていないと感じるようです。それでも非常に繁盛していることに、日本の方々は「こんなに子どもたちがたくさんいて羨ましい」と言い、私たちは「まだまだ日本から取り入れられるものがたくさんある」と実感しています。

一例を挙げると、日本の学習塾や学校は、壁にポスターなどをたくさん貼って賑やかな雰囲気を作っていますが、これが実は非常に重要なのです。学習環境で子どもたちが行きたいと思う場所を作ることが大切で、私たちがベトナムでスタイリッシュな白い壁でデザイン性を重視していたのは、子どもたちにとってはテンションが上がらず、むしろ圧迫感があったようです。

日本の教育関係者は皆「少し静か過ぎる」「かっこよすぎる」といったコメントをくれ、それを反映して改善した教室は子どもたちがより集まるようになり、滞在時間も長くなりました。このような「隠れた要素」がプロダクトだけでなくオペレーション面でもたくさんあるので、もっと積極的に取り入れていきたいと考えています。

「AIチューターと自動採点で教育を変革」:Manabieが実現する教員の時間解放と新たな学びの形

GCP深川)日本やベトナムでサービスを提供する中で、AIは教育分野で現在最もホットなトピックであり、産業としても導入が進んでいるものだと思います。ManabieもAI関連のサービスを提供していますよね。現在、どのような形でAIをプロダクトとしてお客様に届けているのでしょうか?

三澤氏)一つ目は『AIチューター』というプロダクトを展開しています。これは、従来は人間のチューターがサポートしていた質疑応答をAIが担うものです。24時間いつでも質問対応ができ、わからないことをすぐに聞けるため、生徒の学習をサポートする仕組みです。

二つ目は、主に通信制高校や専門学校向けの『採点の自動化』に力を入れています。現在でも、教員が赤ペンで採点する作業は多く発生しています。特にレポートの採点や宿題に点数をつける作業が教員の時間の大部分を占めていることが課題です。このような作業を自動化するプロダクト、この二本柱で展開しています。

GCP深川)お客様の反応はいかがですか?

三澤氏)かなり様々な場面で活用されています。例えば、AI採点の例では、ある専門学校と協力して、美術作品の写真を複数枚撮影してAIがフィードバックするという取り組みもしています。精度も向上しており、様々な使い方が可能になっています。

従来は採点しきれなかった部分や、人手不足で十分に評価できなかった部分まで評価できるようになったという声もいただいています。AIチューターについては、生徒が躓いた時に、従来は教員に質問するまでに2週間ほどのタイムラグがあったものが、その場ですぐに解決できるようになり、モチベーション向上にもつながっているという評価を受けています。

これまでできなかったサポートがAIによって実現され、結果として教員の時間が大幅に確保できるようになりました。その時間を使って、教員が生徒により向き合えるようになり、学習塾などでは「生徒との関わり方について新たな取り組みを考えられる」という反応をいただいています。空いた時間で生徒に向き合う新しい形を模索されているようです。

GCP深川)AIができることが増えたことによって、教育における人の役割や、教員が何をすべきかというのは大きなテーマだと思います。現在、サービスを使用されている方々は、時間の使い方をどのようにシフトされているのでしょうか?

本間氏)スタディサプリやQuipperの時代から言われていたことですが、まず動画学習の導入によって、『ティーチング』—新しいコンセプトを知らない人に教える行為—の部分が大きく変化しました。その結果、一人ひとりに適した対応ができるようになるという方向にシフトしてきたと思います。同じ内容の授業を何度も別々にやるのは効率が悪いですが、スタディサプリの普及によって『最初の説明は動画で十分』という考え方が学校や塾に浸透し、そういったサービスが広まってきました。

しかし、「動画を見てもわからない」「演習問題に取り組む中で行き詰まる」といった場面では質問が必要で、問題を解決しなければなりません。これまではそれを人間の教員が担っていましたが、まさにこの部分をAIチューターで解消できると考えています。実際に、生徒たちは膨大な数の質問をAIに投げかけ、自分の力で解決しています。もちろん、AIでわからない場合は人間の教員がサポートする仕組みですが、テクノロジーによってこの部分は大きく改善されていくでしょう。個別最適化された指導が実現できるようになっていきます。

そうなると、「教員は何をするのか」という問いが生まれますが、二つの方向性があります。一つは、そもそも教員不足の中で、これまで教室を開設できなかった地域にも展開できるようになる、一人の教員で効率的に運営できるようになるという点です。高校の理科や社会、難しい数学など、専門知識を持つ教員が少ない科目も教えられるようになります。

もう一つは、子どもたち一人ひとりが勉強を好きになり、自走できるようにサポートすることです。AIチューターなどを活用しながら自己学習できる環境を整えることができますが、「最初の一歩」はまだAIだけでは難しい部分があります。なぜその子が教科を好きになるのか、といった部分を考え、超個別最適化されたアプローチで、学習内容だけでなく「人間対人間として育てる」という、教育の次元が一段上がると思います。

単に何かを教えるというより、人間として成長してもらうという部分に、学校でも塾でも時間が振り分けられるようになれば、教育機関としても次のレベルに進めるのではないかという議論を、多くの塾関係者と行っています。

GCP深川)Manabieを運営していると、教育という社会や人間自体のインフラがどのように進化していくべきかを、教育機関の方々と一緒に議論しながら考えていくという楽しさと責任が大きいですね。

本間氏)それは非常に大きいですね。特に小学生から高校生までの子どもたちは、基本的に7割程度の時間を学校や塾で過ごしていると思います。私たちはそのワークフローを全て担っていくことを目指しているので、その年代の方々の大部分を占める場所のインフラになるという責任は非常に大きいです。

AIなどの新技術が登場すると、『教育とは何か』『そもそも何を教えるべきなのか』『数学は本当に必要なのか』といった根本的な疑問が様々な方から上がってきます。私はこれらの教科は学ぶべきだと考えていますが、こうした疑問に向き合いながら、教育の本質を定義しつつ事業を進めていく必要があります。教育機関の方々はこういった問題を真剣に考えられている方が多いので、彼らとディスカッションしながら深められることは個人的にも非常に興味深いと感じています。

汎用AIに対する教育特化AIの存在価値:ワークフロー統合で差別化するManabieの挑戦

GCP深川)ChatGPTやGeminiなどの汎用AIの進化が著しい中で、バーティカルなAIエージェントやチューターのような特化型サービスは、徐々にそちらに吸収されていくのではないかという懸念があります。特に若い世代、20代などはすでにこうした汎用AIを積極的に活用していますが、この点についてどうお考えですか?

本間氏)そうですね。その点は私たちが常に『存在意義の危機』として向き合わなければならない課題だと思います。以前は、AIが中学生向けの質問に高校レベルの回答をしてしまったり、単純な間違いがあったりという問題があったため、プロンプトの調整や複数のエージェント型AIを組み合わせるなどの対応をしていました。しかし、最新のAIモデルでは、『あなたは中学2年生だから』といった文脈を理解し、適切なレベルの回答を提供できるようになっています。

さらに、アバターのような人間に近い存在が、生徒に合わせた形で音声も交えながら対応するといったことも、基本的なAIモデルとサードパーティのプロダクトを組み合わせるだけで実現できるようになってきました。そこで私たちがどこに注力するかというと、LMS(学習管理システム)や校務システム、基幹システムといった、教育機関のワークフローに深く入り込んでいくことです。そこには自信を持っています。

AIを活用する際も、単独で使って終わりというプロダクトではなく、ワークフロー全体の中でどう活用していくかが重要です。例えばAIチューターの場合、実際の学校現場でどのように使うかを考えると、意外と使用場面が限られます。カンニングツールとしては使えませんし、60〜80分の授業時間の中でどのタイミングで使い、教員や生徒にどのような価値を提供するのか、家庭学習にどう組み込むかなど、具体的なユースケースまで考える必要があります。

ChatGPTだけだと回答を即座に提供してしまい、教員が管理できなかったり、どのような質疑応答がなされているかが見えないため、生徒とAIチューターのやり取りを踏まえた追加指導ができないといった課題が生じます。そのため、ワークフローに本当に統合し、蓄積されるデータを活用しながら顧客に価値を提供していくことを考えると、単なる基本モデルのラッパー的なプロダクトではなく、より深い統合が必要になります。このように、教員や教室長と『こういう風に使う』というところまで踏み込んで開発している企業は少ないと思いますので、そこがバーティカル統合の重要性であり、私たちの強みになると考えています。

GCP深川)確かに、これはあらゆる専門領域で言えることですね。特に教育分野は子どもを育てるという前提があるため、より一層そういった視点が重要になるでしょう。

「33億円の資金調達で次の一手へ」:Manabieが目指すSaaS拡大とアジア展開戦略

GCP深川)今回のシリーズBで33億円を調達されたと思いますが、今後の事業構想について教えていただけますか?

三澤氏)今後の事業構想としては、まず足元のSaaSビジネスをしっかりと拡大していくことが重要だと考えています。先ほど説明した垂直統合型のサービスについて、学習塾向けではAIから学習管理、基幹システムまでカバーできるようになってきていますが、他の教育機関へはまだ十分に展開できていません。そこをしっかりと広げていきたいと思います。

もう一つは、AI分野です。拓也さんが言っていたように、これからも新しいアプリケーションがたくさん登場すると思いますので、それらを学習や業務フローに適切に組み込み、確固たる形を作り上げることが最も注力すべき点だと考えています。

本間氏)日本事業では、プロダクトラインナップの拡大と、提供するセグメント(対象顧客層)の拡大が重要なポイントになると思います。

会社自体がシンガポールを拠点としていることもあり、アジア全体への展開は私たちの大きなミッションだと考えています。日本の学習塾向けに開発したプロダクトは、他のアジア諸国の学習塾にも展開していきたいですし、日本でも学校などの新しいセグメントに広げていく際には、そのプロダクトやオペレーションも含めた教育機関のモデルをアジア全体に広めていく取り組みが必要だと思います。

まずはベトナムで展開しつつ、他の東南アジア諸国にも広げていくことが、次の成長方向性として重要なポイントになるでしょう。

GCP深川)その計画を進める中で、当然今回調達した資金の一部は人材を増やし、仲間を増やしていくことにも使われると思いますが、現在のManabieはどのような組織で、どのようなカルチャーや人材で構成されているのでしょうか?

三澤氏)日本よりもベトナム人の比率の方が高くなっています。日本ではフルタイム社員が20人ほどで、これからさらに増やしていく予定です。カルチャーとしては多様性を受け入れる環境だと思います。共通して言えるのは、自立して考えて動ける人材が集まっていることです。アシスタント的な役割の人はほとんどおらず、皆が自分のことは自分でやるという姿勢です。私も拓也さんも、自分の仕事を人に任せるということはほとんどなく、AIなども活用しながら日々の業務に取り組んでいます。

フラットな組織で、各分野のスペシャリストが集まり、自立して考えながら意見を交換し合い、多様性を受け入れながら進めていくカルチャーだと思います。

本間氏)付け加えると、私たちのマネジメント層は7カ国ほどの国籍が混ざっています。ドイツ人、フランス人、日本人がいて、公希さんも中国に近いカルチャーを持った人もいるような状況です。そうなると、『阿吽の呼吸』のようなものはあまりなく、明確にすべきことは明確にし、対立するところはしっかりと対立する—『Disagree but commit(意見の相違があっても決定したら従う)』のような形です。

皆が意見を持っており、私のアイデアも公希さんにだいたい否定されるような環境です。意見を言いやすく、取り組みやすい一方で、良い意味での衝突が日常的にある組織だと思います。あまり日本の一般的な企業文化とは異なるかもしれません。

GCP深川)おそらく本間さんの人柄もあると思いますが、議題によっては活発な議論があり、本間さんが様々な人から『それはNOだ』と言われている場面を見ることもあります。

三澤氏)これも良いカルチャーだと思いますが、きちんと権限を委譲していく文化があると思います。かなり任せてもらえる部分があり、それは私だけでなく他のメンバーも同様です。私自身も他のメンバーにどんどん任せている部分があります。

トップダウンで全てを決めるというよりは、しっかりと権限を委譲しつつ、活発に議論し合い、最終的には合意形成して進めていくカルチャーです。先ほどのフラットな組織という点からも、一人ひとりがオーナーシップを持てる環境があると思います。

「全方位で採用中!」:急成長するManabieが求める自立型人材と教育への情熱

GCP深川)具体的には、現在特に力を入れて採用している役割やポジション、領域はどの辺りですか?

三澤氏)現在は全方面で採用を進めています。ビジネス職から、プロダクトマネージャー(PM)、カスタマーサクセス(CS)など、様々な職種で採用活動を行っています。チームとしても拡大したいフェーズにあると考えています。

本間氏)かなりストレッチした状況で、先ほど公希さんが言っていたように、一人ひとりがAIを駆使せざるを得ないほどの状況で頑張っています。単純に全ポジションで人材が足りていない状態です。

GCP深川)どのようなポジションでも人材を探していて、かつ先ほど話されていたように自立した人材を求めている。教育関連の事業なので、フェアな議論ができる人材が多く集まっていると思います。日本を拠点としながらもグローバル、特にアジアで事業展開したいという方は、本間さんのようなフラットでオープンな方なので、ぜひ話してみてはいかがでしょうか。

本間氏)教育という領域自体が本当に魅力的だと思います。私たちは最初学習塾からスタートしましたが、最近では英会話スクールや学童保育、さらにはクラブ活動的な場所でもシステムを使っていただくようになりました。対象年齢も幅広く、中学生・高校生から、大学や専門学校まで展開しています。

提供しているプロダクトも校務関連から学習・教務周りまで幅広いので、教育に興味がある方々にとっては、教育機関の皆様と面白い議論ができる場だと思います。例えば、東京では中学受験が過熱していますが、そうした受験を推進している企業がどのような考えを持っているのか、大学受験予備校のトップ層はどう考えているのか、専門学校のリーダーたちがどう運営しているのかなど、日本の教育を考える上で重要な視点を得られる環境です。

また、グローバルとまでは言わなくても、アジア全体を見据えて本気で経営しているチームや現場メンバーというのは、なかなか機会として少ないと思いますので、その点も日々の業務の中で体感していただける部分だと思います。

三澤氏)先ほど言ったように、日本からアジアへという展開に非常にコミットしています。この分野で私たちは自信を持っており、逆に言えば、ここでしっかりとDX化を進め、教育を届けるプラットフォームを構築できなければ、全体的に遅れてしまうのではないかという責任感を持って取り組んでいます。

教育を変えていきたいという思いを持つメンバーがいれば、ぜひコンタクトを取っていただければと思います。全方面で人材が不足しているので、貢献していただける部分は多いと思います。フラットでカジュアルに会話ができればと思いますので、Facebookなどでコンタクトいただければうれしいです。

本間氏)このフェーズの企業では『まだ組織が整っていない』とよく言われますが、私たちは本当に整っていないと思います。

GCP深川)何度も『全方位で採用している』と言っていただいていますが、本当にそうなので、ぜひご連絡をお二人か、もちろん私にもいただければと思います。

改めて今日は、日本とアジアで教育DXのプラットフォームを作っているManabie社の本間拓也CEO、三澤公希チーフコマーシャルオフィサーにお越しいただきました。ありがとうございました。


以上


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